不動産を家族信託する流れやメリットを解説!売却方法と注意点も
こんにちは。千葉エリアの不動産会社「イエステーション」前島です。
不動産を所有されている場合、「家族信託するのはどうだろう?」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
家族信託はどんな仕組みで、どのような流れで行うのか。
また、行うかどうかの判断材料の一つとして、「売却は可能か」といったお悩みもあるかもしれません。
そこで今回のコラムでは、流れや、行うメリットや注意点など、不動産の家族信託について解説します。
家族信託した不動産を売却する方法もご紹介しますので、ぜひあわせてご参考にしてください。
家族信託とは?任意後見制度との違いも
家族信託とは、自分の財産の管理や運用を、信頼できる人物や法人に託す仕組みです。
語頭に「家族」と付いていますが、未成年者でなければ、家族以外の親しい友人や親戚のほか、不動産のプロである管理を不動産会社に委託することも可能です。
家族信託の仕組みには3つの役割が関わっている
家族信託の仕組みには、「委託者」が財産の管理・運用などを「受託者」に任せ、信託財産による利益を「受益者(財産権を持つ人)」が受け取るという3つの役割が関わっています。
例えば、親(委託者)が自分の財産管理を子ども(受託者)に託し、自分を受益者とすれば、賃料や売却利益を将来の施設入居費用や、医療費・生活費として受け取れます。
任意後見制度との違い
将来の判断能力低下に備えるための方法としては、あらかじめ後見・補佐・補助をする人を指定できる「任意後見制度」もありますが、より柔軟な財産運用も行いたい場合は、家族信託を選ぶことをおすすめします。
なぜなら、家族信託では裁判所の監督を受けずに、財産管理・運用が行えるからです。
逆に、財産の保護だけでなく、医療・介護サービスの契約や手続き支援が必要な場合は、任意後見制度が向いているでしょう。
不動産を家族信託するときの流れは?
家族信託の概要をお伝えしたところで、続いては、不動産を家族信託するときの基本の流れをご紹介しましょう。
ステップ①信託内容を決定する
始めに、「誰に」「何の目的で」「どの財産を」「どの範囲で」「いつまで」任せるのかを決めます。
例えば、将来的な自宅の売却やスムーズな財産継承といった目的があるとしましょう。
その場合、子どもに所有する土地やマンション、一戸建てなどを任せ、修繕や管理だけでなく、自宅を処分できる権限も与えれば、メンテナンスだけでなく、売却も代行できます。
さらに、家族信託の期限を「委託者兼受益者(親)の死亡」に設定し、「終了後に子どもが引き継ぐ」と財産の帰属先を決めておけば、財産相続の面でもスムーズになるでしょう。
ステップ②信託契約書を作成する
信託内容を決めたら、その情報をもとに、信託契約書を作成します。
作成や手続きは自分でもできますが、必要書類の準備など、手間や専門知識を要する部分が多く、負担になりやすいデメリットも。
報酬は発生しますが、司法書士など専門家の手を借りることを検討してみましょう。
なお、信託契約書の形式に法的な定めはありませんが、安全面で問題となる場合も考えられるため、公証人による「公正証書」で作成することをおすすめします。
ステップ③信託不動産の登記変更・金銭管理用口座を開設する
不動産を信託の対象とするには、不動産の名義を受託者に変更する必要があります。
不動産所在地の法務局にて、名義変更を行う「所有権移転登記」と、信託登記であることを示す「信託登記」を行います。
また、信託不動産による家賃収入や、固定資産税などの経費といった金銭を管理・運用する口座を開設し、支払い口座の振替など、関連する手続きも行う必要があります。
賃貸(収益)物件を含むなら、入居者に対し、受託者(新しい管理者)と家賃の振込先を知らせておきましょう。
不動産を家族信託にするメリットや注意点も確認!
不動産を家族信託にするにあたって、メリットと注意点を事前に把握しておくとスムーズに進めやすいです。
不動産を家族信託にするメリット
メリットとしては、「柔軟な財産管理と運用が実現しやすくなる」「相続対策にもなる」という2点が挙げられます。
不動産の処分や活用は、基本的に所有者しか行えません。
しかし、家族信託にしていれば、信託契約書に記載された権限の範囲内であれば、受託者の自由裁量で不動産を取り扱えます。
親が認知症で「意思決定ができないから不要な不動産を売れない」と困る心配がないですし、共有不動産の場合なら、受託者1人が管理できるので、名義人全員の合意を取る手間がなくなります。
また、信託契約終了後(例:親の死亡後など)の財産の帰属先を指定でき、二次相続(子から孫へ)まで順位づけられるので、遺言の代用として、相続時のトラブル回避に役立ちます。
不動産を家族信託にする注意点
家族信託を行う際には、下記のような注意点もあります。
- 役割によってかかる税金が違う
- 受託者が1年以上不在になると信託が終了する
まず、受託者と受益者には、下記の税金が課税される可能性があります。
<受託者の場合>
- 信託不動産を所有する:固定資産税
- 不動産を信託登記する:登録免許税
<受益者の場合>
- 委託者と受益者が異なる場合:贈与税
- 信託財産を相続する場合:相続税
- 賃料収入など利益を得た場合:所得税
また、受託者の死亡などでその役目を負うことができず、新受託者が就任しない場合が1年以上続くと、信託が自動的に終了してしまいます(信託法第163条3号)。
長期の信託を行う際は、受託者の予備(後継受託者)も指定しておくと安心です。
家族信託した不動産を売却する方法
最後に、家族信託した不動産を売却する方法をご紹介しましょう。
主な方法には、次の2つがあります。
- 信託不動産自体を売却する
- 信託不動産の財産権(受益権)を売却する
なお、不動産に抵当権が付いていると基本的に売却できません。
そのため、売却前にローンを完済して、抵当権を外す手続きを行っておきましょう。
方法①信託不動産自体を売却する
1つ目は、受託者が売主となって、信託不動産そのものを売却する方法です。
例えば、委託者が親、受託者が子ども、受益者が親というケースであれば、子どもが売却行為を行い、財産権を持つ親のために、売却代金を使うということになります。
不動産仲介を依頼して売却を進める場合の流れは、下記の通り、通常の不動産の売却方法とほとんど同じですが、信託登記の抹消手続きが必要となります。
- 不動産の査定を不動産会社に依頼する
- 不動産会社に仲介を頼み、販売活動を行う
- 売買契約を締結する
- 決済・物件の引き渡しを行う
- 名義人の変更(所有権移転登記)や信託登記の抹消手続きをする
受託者が売却を行うには、「受託者が信託不動産を売却できる」という旨を信託契約書に記載し、売却権限を信託登記しておく必要があります。
売却代金は信託財産であるため、受託者名義の口座ではなく、家族信託の金銭管理用の口座に入金手続きを行いましょう。
通常の不動産売却の流れは「不動産売却の流れを解説!必要書類や注意点も知ろう」で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご参考にしてください。
方法②信託不動産の財産権(受益権)を売却する
2つ目は、信託不動産による「利益を受ける権利」を売却する方法で、節税効果が期待できる理由から、大家業などビジネス目的で利用されることが一般的です。
1つ目と同じケースを例に取ると、受益者である親が売主となって財産権を売却し、売却代金に相当する金額を受け取ることになります。
売却後は、引き続き子どもが不動産を管理し、財産権を購入した買主に渡します。
信託契約書のなかで、「財産権の売却は不可」などと記載がある場合は実行できないため、条項の確認を行いましょう。
売却益「譲渡所得」が発生した場合は確定申告が必要
いずれの方法でも、売却によって譲渡所得が発生すれば、譲渡所得税が課されますので、受益者が確定申告を行う必要があります。
売却の翌年、2月16日〜3月15日のうちに、忘れず行いましょう。
申告の際、信託不動産の扱いはほかの財産や受益者個人の所得と区別されるため、損益通算できない点にご注意ください。
譲渡所得税や売却にかかる税金は、「家の売却でかかる税金とは?譲渡所得の求め方や節税方法も」で詳しく解説していますのでぜひあわせてご覧ください。
不動産を家族信託すれば、認知症対策や相続トラブル対策に!
不動産を家族信託しておけば、判断能力が低下した場合に家族に売却を代行してもらえたり、子から孫へと2世代にわたって相続順位を指定できたりするため、認知症や相続トラブル対策にも活用できます。
手続きは、①信託内容を決め、②信託契約書を作成し、③信託不動産の登記変更や金銭管理用の口座を開設するという、3つのステップで行います。
信託契約書の範囲で受託者は、不動産のメンテナンスや管理、売却など処分行為ができますので、目的に沿った内容をよく検討しましょう。
信託不動産を売却した場合に譲渡所得が発生したら、受益者は確定申告を行う必要がありますので、ご注意くださいね。
不動産の売却に悩んだときは、ぜひ不動産会社にご相談ください。
千葉エリアの不動産売却のお悩みは、「イエステーション」がサポートいたします。
多古町店 前島 亮
売却は一生に何度もあるものではございません。
より安心していただけるよう、分かりやすい資料とわかりやすい説明を心がけております。
地元になくてはならない不動産屋としてクオリティの高いサービスをご提供してまいります。