境界トラブルのある土地は売却可能?起きやすいトラブルと解決策を紹介
こんにちは。千葉エリアの不動産会社「イエステーション」前島です。
「境界トラブルがある土地は売却できるのだろうか」
土地の売却を検討中の方には、こんな不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
境界トラブルとは、隣地との境界線が曖昧なために起こるトラブルのこと。
結論からいえば、境界トラブルがあっても売却自体は可能ですが、デメリットがあるため売りづらいといえます。
今回のコラムでは、境界トラブルの内容と売れにくい理由を解説します。
トラブルを解決して売却するコツもあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
土地の境界トラブルにはどのようなものがある?
土地の境界トラブルとは、所有地と隣地との境界線が曖昧(境界未確定)なために起こるトラブルであり、近所トラブルの一つです。
境界トラブルには、次のような事例が挙げられます。
- 塀が境界線だと思っていたけど実は違った
- 境界標(境界杭)が実際の境界を示していない
- 建物や所有物が境界を越えていて困っている
- 測量したいのに隣地所有者に拒まれた
では、なぜ境界線が曖昧になってしまうのでしょうか。
主な境界トラブルの原因は、大きく分けて次の3つ。
- 土地の境界線である「筆界」と「所有権界」がずれている
- 所有権界を示す「境界標」や「ブロック塀」が判断基準として利用できなくなっている
- 隣地所有者との境界線の認識が異なる
土地の境界線には「筆界」と「所有権界」の2種類があり、筆界は登記簿上の公的なもの、所有権界は所有権がおよぶ範囲を定めた境界線をいいます。
筆界は登記しないと変更できないのに対して、所有権界は当事者の合意で自由に変更可能です。
基本的には、筆界と所有権界は一致しています。
しかし、中にはずれが生じている場合があり、原因の一つには、所有者同士で合意して所有権界を変更した際に、変更点を登記(筆界の変更)をしなかったことが挙げられます。
原因を確認したところで、続いてはよくある境界トラブルを確認していきましょう。
トラブル①:「ブロック塀=境界線」ではなかった
「ブロック塀=土地の境界線である」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
しかし実際は、厳密にいうと以下の4つのパターンがあります。
- 塀の側面(所有地側)が境界線となる(相手の敷地内ギリギリに設置した場合)
- 塀の側面(相手側)が境界線となる(所有地側に設置した場合)
- 塀のちょうど真ん中が境界線となる
- 塀と境界線が全く異なる(別の場所が境界線である)
とくに塀を建ててから年月が経っていると、境界位置を示す資料がない限りは、建築当時を知る人がいなくなるため、隣地所有者と所有者側の代々の認識が大きくずれる可能性もあります。
普段暮らしている分には問題として認識されにくいものの、正確な土地面積を出したいとき(売却や相続時)には、改めて測量が必要になるでしょう。
トラブル②:境界標が境界の判断基準にならない
境界標とは、境界の点や線の場所を示す標識で、素材はコンクリートや石、プラスチックや金属の杭などさまざまです。
境界標の位置は、法務局に備え付けられる公的な図面「地積測量図」に記載されます。
つまり、基本的に境界標の示す境界は、登記上の情報(筆界)と一致するわけです。
しかし、次のようなケースもあるので、必ずしも公簿上の境界と一致しているとはいえません。
- ブロック塀や下水管などの工事で、施工業者が境界標を移動させた
- 建て替え工事の際に、建物と一緒に撤去してしまった
- 工事の際撤去したが、工事後に正確でない位置で復元された
- 所有権界を変更したのに、境界標を移動していない
上記のケースが考えられる場合に境界標の正しい位置の確認を怠り、ずれたまま放置すると、子々孫々の代で売却しようとした際、大きなトラブルになる恐れがあります。
トラブル③:建物や所有物が境界を越えている
隣地所有者と境界線の認識がずれていると、所有物などが越境しているといったトラブルも起こりがちです。
- 庭木の枝などが境界を越えている
- 境界線上にブロック塀など構造物や室外機などの設備がある
- 電気の引込線などが境界線の上空を越えている
- 地下部分で、ガス管や上下水道管が越境している
越境された部分(占有部分)があると、建築可能な面積に含めることができません。
新築・建て替えする際に使えない部分があるため、売却時に不利になります。
トラブル④:境界の確定に隣地所有者の協力が得られない
境界が曖昧だと売却時に不利になる点は多いため、売り出す前には境界を確定しておくほうが良いでしょう。
ただし、境界確定には隣地所有者に立ち会ってもらう必要があります。
しかし、すべての隣地所有者が快く協力してくれるかというと、中には自分の土地が狭くなることや、立会いの手間を嫌って断られるケースも。
無理にお願いすると、関係が悪化し、さらなるトラブルを生む可能性もあります。
また、土地所有者が複数人いる場合は、全員の合意を取り付けないといけません。
隣がマンションである場合は住民すべてが対象者となるので、合意を得るためには一苦労となるでしょう。
なお、土地の境界線トラブルのほかにも、さまざまな近所トラブルが起こる可能性があります。
詳しくは「近所トラブルのある家は売却可能?起きやすいトラブルや売却方法を紹介」で解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
境界トラブルを抱えたまま土地は売却できる?
結論から先にいうと、境界トラブルがある土地でも、売却自体は可能です。
売主には土地の境界を買主に示す「境界明示」の義務がありますが、不動産取引上、売主と買主が合意していれば売買は成立します。
買主が「土地境界が未確定でもかまわない」と承知して買うなら問題ありません。
ただし、境界が曖昧な問題を抱えた土地は、買い手にとって次のようなデメリットがあるので、一般的には土地の購入希望者の需要が低い傾向があります。
- 将来的に隣地所有者とトラブルになるリスクがある
- 住宅ローンの融資が受けられない可能性が高い
現時点で具体的な境界トラブルが発生していなくても、購入後に隣地所有者と揉めるかもしれません。
そして、「境界が曖昧だと物件に何か問題があるのでは」と金融機関から疑いを持たれる要因になるので、購入時に住宅ローンの融資を受けられない恐れもあります。
不動産を購入する際、ほとんどの買い手は住宅ローンを利用しています。
住宅ローンを借りられないと自己資金で一括購入するか、住宅ローン以外の融資を検討する必要があるので、買い手にとって大きなマイナスポイントです。
「買い手が付きにくい=売りにくい」という点から、土地を売却する際は、境界未確定の状態を改善してから売り出すことをおすすめします。
次で解決方法について、詳しく確認していきましょう。
土地の境界トラブルを解決して売却を成功させるコツ
売却をスムーズに成功へと導くコツは、境界トラブルを解決してから売却すること。
つまり、売却の前提として、境界を確定することが重要です。
土地の境界トラブルを解決する方法やコツを見ていきましょう。
まずは「地積測量図」を確認しよう
トラブルの解決に当たって、まず「地積測量図」で公簿上の正しい境界を確認しましょう。
記載してある境界標の位置と比較して、正しい境界線と合致しているか照合してください。
ずれが生じていれば、修正する必要があります。
ただし注意点として、古い地積測量図の場合は現行の法律が適応されていないため、測量する際に隣地所有者が立ち会っていないなど、信頼性に欠ける恐れがあります。
平成17年(2005年)3月7日以後に作成されたものを参考にしましょう。
地積測量図がない場合は「確定測量」を依頼
地積測量図はすべての土地のものが備え付けられているわけではありません。
そのため、参照しようにも地積測量図が取得できない場合もあります。
境界を示す図面がなければ、隣地所有者の立会いのもとで正確な面積を測る「確定測量」が必要です。
確定測量は、土地家屋調査士に依頼します。
費用は売主負担が通常です。
測量のしやすさや広さなどによって異なりますが、100㎡の四角い土地の場合の相場は、30〜80万円ほどとなっています。
道路に面している土地は道路との境界確定申請が必要
道路は国や自治体が管理しているから、道路に面している土地の境界線は確定済みと安心するのは危険です。
測量技術の発達で、測量当時と現在ではずれが生じている場合もあります。
道路内の敷地は「公共用財産」のため、境界の確定には「境界確定申請」が必要です。
申請書と必要書類の提出をし、確定条件の相談や現地立会いを経て合意すれば、確定されます。
現況を地積測量図に合わせる
ブロック塀を境界線だと思っていたケースや、境界標が移動・撤去されて境界の判断に使えないといったケースでは、筆界と所有権界がずれている可能性が高いです。
一時撤去した境界標を建て替え工事や水道工事をしたあとに戻し忘れていたなら、筆界(公簿上の境界線)に合わせて、隣地所有者の立会いのもと、境界標の修正を行います(境界標が失われていたら復元)。
ブロック塀が境界線ではないと疑われる場合も同様の手順で修正しておくと、買主の不安解消につながります。
所有権界を変更したら登記して筆界と一致させる
隣地所有者と話し合って所有権界を変更した場合は、境界標を変更位置に移動しておくと、年月が経って当事者がいなくなった場合でも、正しい境界線を判別できます。
ただし、筆界は所有権界と違って、個人間の話し合いだけで変更はできません。
変更情報を登録する必要があります。
登記(分筆登記や所有権移転登記)をして筆界を一致させましょう。
越境物があるなら「境界確認書」を作成する
越境物がある場合は、隣地所有者に立ち会ってもらい、どんな状況で何が越境しているのか確認し、合意に至った内容を「境界確認書」を作成して記載します。
「どの越境物は了承済みだ」という覚書を保管していれば、子々孫々の代になっても両家で折り合いが付きやすくなりますし、売却して新しい所有者に変わっても、トラブルになりにくいといえます。
隣地所有者とは日頃から交流を図ろう
境界の確定には、隣地所有者の協力が不可欠です。
交流が乏しい隣人から急なお願いをされると、気分を害してしまう人もなかにはいるでしょう。
立会いや測量の許可、書類作成時の合意を取り付けるためには、日頃から交流を図っておくことが大切です。
当事者間で境界の確定できない場合は?
「隣地所有者が協力してくれなくて筆界が確定できない」といった場合は、次のような解決方法があります。
- 筆界特定制度
- 裁判外紛争解決制度(ADR)
- 境界確定訴訟(裁判)
まず、筆界がどこにあるのかを明らかにするためには「筆界特定制度」の利用が有効です。
法的拘束力はありませんが、公的な判断として隣地所有者に筆界を明示できるので、裁判をせずに、また裁判より早く(約6カ月)解決できる可能性があります。
筆界特定制度の領分は筆界だけなので、どこまで所有権が及ぶのか所有権界も明らかにしたい場合は「裁判外紛争解決制度(ADR)」を活用すると良いでしょう。
土地家屋調査士や弁護士など専門家が相談・調停を行い、当事者の話し合いによる解決を図る制度です。
合意するかどうかは平均6カ月で決まり、和解契約書を結べば、履行について法的効力が発生します。
上記2つの方法を講じても、当事者の主張が折り合わない場合は、裁判所にて境界確定をする「境界確定訴訟」が最終手段となります。
ただし、審判が終わるまでには平均1年半ほどの期間がかかりますし、ほかの2つの解決法と比べて費用も高額になる点を知っておきましょう。
また、境界トラブル以外にも売れない条件はいくつかあり、売れない場合の解決策ももちろんあります。
詳しくは「 売れる土地と売れない土地の差は?売るための対策も解説!」で解説していますので、ぜひあわせて参考にしてください。
境界トラブルがある土地の売却は問題を解決してからがベスト
土地の境界トラブルは、所有地と隣地との境界線が曖昧なせいで発生するトラブルです。
売却自体は可能ですが、将来的に隣地所有者ともめる原因になったり、購入の際住宅ローンの融資が受けられなかったりといったデメリットがあるので、買い手が付きにくく、売りにくいといえます。
土地の売却前に、境界を確定させることが重要です。
「地積測量図」で確認し、登記上の境界線である「筆界」と所有権の範囲を定めた「所有権界」がずれていれば、境界標を修正したり、所有権界の変更点を登記したりして一致させましょう。
隣地所有者の協力が得られない場合は「筆界特定制度」や「裁判外紛争解決制度」など専門家の力を借りて解決する方法もあります。
不動産売却に悩んだときは、ぜひ不動産会社にご相談ください。
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多古町店 前島 亮
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