不動産売却は相続前?相続後?メリット・デメリットや判断ポイントも
こんにちは。千葉エリアの不動産会社「イエステーション」前島です。
親や親戚が不動産を所有している場合、「不動産売却は相続前と相続後のどちらが良いのだろうか」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
将来的に不動産を受け継ぐことを考えると、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて判断することが大切です。
そこで今回は、不動産売却を行うメリット・デメリットを、相続前と相続後に分けて徹底解説。
どちらにするか迷ったときの判断ポイントもご紹介しますので、ぜひあわせて参考にしてください。
不動産売却を【相続前】に行うメリット・デメリットは?
不動産売却を相続前に行う(不動産の所有者が売却を行う)ケースには、次のようなメリット・デメリットがあります。
【メリット】
- 遺産分割がスムーズに行える
- 売却利益を引越し資金や老後資金などに充てられる
【デメリット】
- 相続時の税金負担が大きくなる
1つずつ解説していきます。
メリット:遺産分割がスムーズに行える
遺産相続する際、相続前に売却して現金化しておくことで、遺産分割がスムーズに行いやすくなります。
相続財産として、現金は不動産そのものよりも公平に分けやすいからです。
メリット:売却利益を引越し資金や老後資金などに充てられる
不動産を売却すれば、売却利益を自由に使えます。
所有者がマンションに住み替えたい、もしくは老人ホームに移る場合や家族と同居するといった場合は、引越し資金、施設への入居資金、今後の生活資金などに充てることができます。
デメリット:相続時の税金負担が大きくなる
不動産を現金化して相続すると、不動産そのものを相続するより、相続税の負担が大きくなる可能性が高い点に注意が必要です。
相続税は原則、現金の額面が課税金額となります。
そのため、不動産が2,000万円で売却でき、売却利益をそのまま現金で相続した場合、2,000万円に対して課税されます。
一方、土地や建物といった不動産を相続した場合は、「路線価」や「固定資産税評価額」が評価の基準となります。
路線価は、時価とほぼ同一である「地価公示価格」の約8割が評価の目安です。
固定資産税評価額は、土地の場合は地価公示価格の約7割、建物の場合は、新築として建て直した場合の価格(再建築価格)の約7割が目安となります。
つまり、売却すると2,000万円の価値がある不動産だとしても、不動産のまま相続した場合の課税対象額は7〜8割になるということ。
現金で相続すると、課税金額が高くなるケースがあることは知っておきましょう。
不動産売却を【相続後】に行うメリット・デメリットは?
不動産売却を相続後に行う(相続人が売却を行う)ケースには、次のようなメリット・デメリットがあります。
【メリット】
- 相続税の負担を軽減しやすい
- 譲渡所得税の負担も軽減しやすい
【デメリット】
- 相続人が複数の場合に売却がスムーズに進まない可能性がある
また、相続人が不動産売却を行う場合は、所有者が売却する流れと少し異なり、次のステップが必要です。
- 遺産分割を行う
- 相続登記を行う
まず、遺産相続の内容を確認して、法定相続人全員で遺産分割協議などの話し合いを行い、遺産の分割を進めます。
誰が相続するか決まったら、被相続人から相続人へと不動産の所有権を移す「相続登記」を行い、所有者となる(名義を変える)ことで不動産売却が可能になります。
相続後の不動産売却の流れは「亡くなった親の家を売る方法や流れを確認!かかる費用や注意点も」にて解説していますので、ぜひあわせて参考にしてくださいね。
では、これを踏まえた上で各メリット・デメリットを確認していきましょう。
メリット:相続税の負担を軽減しやすい
相続後に不動産売却を行う最大のメリットは、相続前の売却と比べて、相続時の節税がしやすい点です。
節税のポイントは主に2つ。
まず1つは、相続前のデメリットでお伝えした、現金よりも不動産そのものを相続するほうが相続税評価額が小さいことが挙げられます。
2つ目は、一定の条件を満たした場合「小規模宅地等の特例」を利用できることです。
小規模宅地等の特例を適用すると、相続財産が被相続人あるいは被相続人と生計を共にしていた親族の居住用(あるいは事業用)に使われていた場合に、相続税評価額を減額できます。
例えば、被相続人の自宅を相続した場合は、宅地のうち330㎡までの部分について、評価額の80%が減額可能です。
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
譲渡所得税の負担も軽減しやすい
不動産を売却して利益「譲渡所得」がある場合は、譲渡所得税の納付義務が発生します。
譲渡所得とは、売却代金から「取得費」や「譲渡費用」といった費用を差し引いた金額です。
譲渡所得に一定の税率をかけた金額が、譲渡所得税として課税されます。
相続後に不動産を売却した場合で一定の条件を満たすとき、譲渡所得を軽減し、譲渡所得税の節税につながる次のような特例が利用可能です。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続財産を、相続開始のあった日の翌日から3年10カ月以内に売却した際、相続税として収めたうちの一定金額を、取得費に加算できる。
参考:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
被相続人の自宅であった空き家を売却した際、譲渡所得から最高3,000万円控除できる。
参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
なお、上記2つの特例は併用できませんので、両方に当てはまる場合は、どちらを適用するか検討が必要です。
デメリット:売却がスムーズに進まない可能性がある
相続人が複数いる場合、不動産をどう分割するかや、そもそも売却したくないという相続人がいる可能性もあるなど、売却がスムーズに進まないことがあります。
不動産の主な遺産分割方法としては、相続人全員の共有名義にする、1人が相続して残りの相続人には相応の財産(現金など)を支払う、といった方法があります。
共有名義にすると、全員の同意がないと売却できないので、1人でも反対意見が出れば、売却がスムーズに行えない可能性もあるでしょう。
売却代金を相続税の納付に充てる場合は、相続開始後10カ月以内という申告納税のタイムリミットも考慮しないといけません。
売り急いでしまい、価格交渉が十分行えないまま安く売ってしまうことのないよう、売却スケジュールをうまく調整する必要があります。
不動産売却で相続前でも相続後でも変わらない点はある?
相続前・相続後の不動産売却に共通して、売却物件がマイホームであった場合は、所有期間の長さに関係なく、譲渡所得から3,000万円を限度に控除できる「マイホームを売ったときの特例」が利用可能です。
主な適用要件は、売主が所有者として居住用に利用していた物件であり、売却先が親族などでないこと、が挙げられます。
そのため、相続後に適用したいなら、相続登記後に自宅として利用する必要があります。
さらに、所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合には、一定の要件を満たすことで課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分について軽減税率が受けられる「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」も適用できます。
相続物件の所有期間は被相続人の所有期間を引き継ぐため、売主が名義人となって自宅とした期間と合わせて10年を超えれば受けられます。
計算式は次の通りです。
- 6,000万円以下の部分:課税長期譲渡所得金額※×10%
- 6,000万円を超える部分:(課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×15%+ 600万円
なお、課税長期譲渡所得金額の算出方法は次の通りです。
(土地建物を売った収入金額)-(取得費+譲渡費用)-特別控除
平成25(2013)年から令和19(2037)年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税とあわせて申告・納付します。
参考:国税庁「マイホームを売ったときの特例」/国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
不動産売却を相続前・相続後どちらにするか迷ったら?
不動産売却を相続前と相続後のどちらのタイミングで行うか迷った場合は、売却の目的や状況に応じて、次のポイントを参考に検討してみてください。
税金の負担をなるべく抑えたいなら相続後
相続税や譲渡所得税といった税金の負担を軽減を優先するなら、相続後の売却がおすすめです。
ただし、特例には適用要件があり、中には「いつまでに売却する」といった期限も含まれますので、国税庁のホームページにて確認しておきましょう。
自宅は不要!老後資金などに充てたいときは相続前
将来的に使う予定のない不動産であり、所有者が別の物件や老人ホームなどに引越しをしたいなど、老後の資金など現金化したい目的があるなら、相続前に売却すると良いでしょう。
遺産分割時にトラブルが起こりそうな場合は相続前
相続人が複数いるなど、財産分割でトラブルが起こりそうな場合は、相続前に現金化しておくと遺産相続時にスムーズです。
所有者本人が売却したくないなら相続後
所有者が「思い入れがある家だから売りたくない」と希望している場合は、無理に売却を進めるのではなく、相続後に売却するのが適切です。
所有者の生前に不動産を受け継ぐ方法としては、「生前贈与」という方法もあります。
所有者本人の希望に基づいて財産の分配ができるので、財産分割時のトラブルを回避しやすいメリットがあります。
詳しくは「不動産は生前贈与と相続どちらが得?メリットや注意点を知ろう」にて解説していますので、ぜひあわせて参考にしてください。
不動産売却は節税面では相続後、スムーズな売却には相続前がおすすめ
不動産売却を相続前に行って現金化すると、遺産分割がスムーズにでき、資金として自由に使えますが、相続税の税負担が大きくなるデメリットがあります。
一方、相続後に売却を行えば、税金の負担が軽減しやすい反面、相続人が複数の場合、売却がスムーズに進まない可能性があります。
相続前・相続後に共通して、一定の条件を満たすことで「マイホームを売ったときの特例」が適用でき、所有期間が10年を超えた場合は「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」も適用可能です。
相続前と相続後で迷った場合は、売却の目的や状況に応じた判断が大切。
特例の適用には、売却の期限など適用要件があるので、国税庁のホームページで確認しましょう。
不動産売却に悩んだときは、ぜひ不動産会社にご相談ください。
千葉エリアの不動産売却のお悩みは、「イエステーション」がサポートいたします!
多古町店 前島 亮
売却は一生に何度もあるものではございません。
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